家から勤務先まで徒歩なことと、勤務開始時間が遅いことから、最近朝のワイドショーをほぼ毎日見ており、すっかり主婦顔負けのワイドショーウォッチャーになってしまいました・・・基本的にワイドショー見ると、専門家でも何でもない芸人やらの思い込み発言などに対して頭にハテナマークが飛ぶことが多いのですが、その中でも最近特にオススメ?なのが、テレビ朝日のモーニングショーです。さらにその出演者の中でオススメなのがコメンテーターの玉川徹さんです。いや、本当ツッコミどころが満載の発言が多くてブログのネタに困った時はオススメですわ。この前も、ブラックバイトに対してコメントをしてましたが、その際に、「バイトは簡単にクビにできるんだから、正社員みたいな責任を負わせるべきではないですよ」とブラックバイトの犠牲者に同情を示していました。パートタイムの人に過度な責任を負わせるべきではないというのはそのとおりですが、その理由「バイトは正社員より簡単にクビにできる」って間違っていないか?と疑問に感じました。そこで、今日は玉川徹さんの「パートタイムは簡単に首にできる」発言に、ツッコミを入れていきたいと思います。
パートタイムでも期間の定めがない労働者の場合は、厳しい解雇規制が使用者に課せられる
まず、パートタイムの定義ですが、他の労働者に比べて短い労働時間の人を指します。
パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。(厚生労働省ホームページより)
そしてパートタイムも労働者ですから、①期間の定めがない場合(無期労働契約)、②期間の定めがある場合(有期労働契約)の2つのパターンがあります。無期労働者はいわゆる正社員ですので、厳しい解雇規制、(①人員整理の必要性②解雇回避努力義務の履行③被解雇者選定の合理性④手続の妥当性の四要件を満たすこと)が課せられます。基本的には、パートタイムの場合は、有期労働契約でしょうが、仮に中小企業や零細企業で労務管理が適当で、採用時に書面で労働契約を結ばずにいた場合は、会社がパート(有期労働)だと思ってても、自分は無期雇用だと思っていたと主張すれば、無期労働契約、いわゆる正社員なみの解雇規制に守られることも可能ということです。つまり、パートタイムというよりは、無期労働契約か有期労働契約かの区別によって、解雇規制が大きく変わることになります。パートタイム=有期労働契約という訳ではないのです。
有期労働契約の場合であっても、そんなに簡単に解雇はできない。
では、パートタイム(所定労働時間が短い労働者)で有期労働契約(1年契約など)だった場合は、簡単にクビにできるのでしょうか。これも2つのケース、契約途中の解雇と期間満了による雇い止め、に分けられます。契約途中の解雇は、例えば、一年契約だったのに、半年で解雇された場合を指します。この契約途中の解雇にも、次のような厳しい規制が使用者に課せられています。要するに事業を廃業しなければならないやむにやまれぬ事情があってはじめて契約途中に解雇することができるという訳です。
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の場合、使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまで労働者を解雇することはできません。しかし、「やむを得ない事由」があるときは、各当事者は直ちに契約の解除の申入れができることとされています(民法第628条)。
この「やむを得ない事由」についてですが、経営状況の悪化により廃業することとなった使用者が、契約期間を定めている労働者を解雇することを肯定する考え方が一般的のようです。(埼玉県ホームページより)
最後に、有期労働契約であり、かつ期間満了による雇い止め、つまり契約はもう更新しませんって言って実質的にクビにする場合ですが、こちらは残念ながら今までのケースのような強い規制は使用者に課せられていません。しかし、明日から来なくていいよと言って簡単にクビにできる訳ではありません。具体的には、契約が3回以上更新されている人、または1年を超えて勤務している人の契約を更新しない場合は、契約満了日の30日前までに予告をしなければなりません。
(厚生労働省ホームページ:労働契約の終了に関するルールより)
ジャーナリストが全国放送のテレビで適当な発言をするべきではない
さて、ここまで細かいことを書いてきましたが、自分が言いたいのは、仮にもテレビ局社員でジャーナリストたる者が、影響力がある全国放送のテレビで適当な発言をしないで欲しいということです。居酒屋で友人同士で話すのには、何ら問題ないですが、この放送を見た人たちの中には、「そうか、やっぱりパートは簡単にクビにできるんだな」と信じてしまう人も多くいるでしょう。それだけ、テレビはまだ多くの人に伝えるという意味ではかなり影響力がある媒体です。ちなみに、今まで長々と書いてきたことは、厚生労働省のホームページやその他労務問題について扱っているサイトを数時間調べて、書いた内容です。自分は労務関係に素人ですが、素人でも数時間調べればわかることをテレビ局の一応コメンテーターとされているジャーナリストが下調べもせずに、適当に発言することは許されません。
本日の社会を生き抜く知恵
パートタイムでも内容によっては、正社員なみの解雇規制で守られるケースもある。クビを宣告されても、諦めずに自分の労働契約を確認することが必要。