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書評:あやしい投資話に乗ってみた by 藤原久敏

投稿日:2017年3月16日 更新日:

題名のとりあえず体当たりで体験する的なノリが自分の琴線に触れる感じだったので、キンドルでポチッと購入してみました。値段も400円もいかないくらいの格安だったので。内容的には、自分の予想通り、著者の人が文字通り身銭を削って巷のもうけ話に乗って投資した感想と実際の収益をルポした話でした。その中には世間で一時話題になった破綻した安愚楽牧場もあり、破綻前に勧誘資料に異変があったことなどを赤裸々に語っており面白かったです。また、ただルポの内容が面白いだけではなく、著者はファイナンシャルプランナーなので、実際に自分が行った投資の内容を金額を含めて具体的に開示しており、リスクとリターンを客観的に分析しているので、その点も読んでて面白かったです。という訳で、本日はこの本で取り上げられていた様々な投資話の内の一つを実際に紹介してみたいと思います。

怪しい投資話~未公開株~

未公開株って名前を聞いた時点で詐欺の代名詞のようなイメージが頭に浮かび、自分も含めてマトモな人なら投資をしようとは思わないでしょう。ただ、この著者の面白いところはノリがよいこと、ネタのためには多少危ない話でもどんどん積極的に乗っかっていきます。テレアポでかかってきた胡散臭い未公開株の営業の人とネタのためにとノリで面談の約束をしちゃいます。で実際に会った際の未公開株の営業トークの共通点は、対象となっている企業の収益性を強調した資料を山のように持ってきて、将来性があることをアピールすることだそうです。一方で、「株式上場する可能性はあるのか」とか「今まで取り扱った会社で上場した会社はあるのか」と具体的な事柄を聞くと途端に曖昧な話に終始するようです。なので、実生活で未公開株の話を持ちかけられたら著者にならい「実際今まで上場したことあるの?」って上場の時期を具体的に聞いて切り返すのがよさそうです。まあ、そこまでしなくても未公開株って時点でほぼ100%詐欺でしょうから相手にしなくてもよいのですが。でここまでは自分もだいたいわかっている話でたいして驚かなかったのですが、その後の展開は少し驚きました。著者はなんと実際に未公開株に投資をしてしまうのです。

未公開株を売買できる市場がある

もっとも未公開株を買うと言っても怪しげな電話勧誘を受けて買ったのではなく、グリーンシート市場という日本証券業協会が運営しているちゃんとした市場を経由して未公開株を購入したそうです。恥ずかしながらグリーンシート市場って資格試験で名前は聞いたことがありましたが、その具体的な内容は全く知りませんでした。日本証券業協会による登録を受けた会社のみグリーンシート銘柄として未公開株でも自由に流通、売買できるようですが、どうやら著者の話によるとそれでもかなりハイリスクっぽいです。投資したグリーンシート銘柄の会社の事業内容がプログラミング関係からカキのネット販売に業種転換してたとかね(笑)まあ、マザーズ市場でも急騰急落する傾向があるから、中小企業の未公開株はかなりボラティリティーが高いのでしょうね。

そんな中、なんとこの会社は、Javaを主としたシステム開発から撤退してしまったのです。Java技術に強み……ということで期待して買ったのに、これは何ということでしょうか。そして気が付けば、なんと牡蠣のネット販売へと、完全に事業内容を変えてしまったのです。いや、私は牡蠣フライは大好きですが、それとこれとは、話が違います。  でも、すでに決まってしまったのです。投資したITベンチャー企業は、牡蠣の販売会社へと変わってしまったのです。

ちなみに、グリーンシート市場は現在低迷しており、16銘柄しかなく、あまり流通性がないため値がつきにくく、しかも平成30年3月末を持って廃止されるとのことです。ちなみに証券業協会のホームページにはこんな記載がありました。どうやらグリーンシート銘柄と嘘をついて勧誘している詐欺が横行しているようです。まあ、やっぱり未公開株には手を出さない方がよさそうです(笑)

【注 意】
実在する証券会社を騙って偽造したパンフレットを用いて、グリーンシート銘柄ではない銘柄(株式会社新日光ソーラー株式)をグリーンシート銘柄として勧誘しているケースが見受けられました。日本証券業協会においては、これまでに株式会社新日光ソーラー株式をグリーンシート銘柄として指定したことはありません。

この未公開株の話は本の中で著者が投資した怪しげな話のほんの一例です。それ以外にも海外ファンド、和牛オーナー、南アフリカランドやトルコリラなどのFX、日経平均先物取引など、様々な投資を全くこりずにネタのために行っています。ちなみに著者はFX投資の章でトルコリラを2013年末に50円で購入したことを語り、このように宣言しています。

これからはブレることなく、スワップ金利生活をめざし、高金利通貨をひたすら買い増し、そして一生持ち続けようと、腹をくくっています。

ちなみに2017年3月16日現在のトルコリラは31円です。著者は大丈夫なのかと他人事ながら心配になってしまいます。とはいえ、こんな感じで著者は「この話あやしいな~」と知りながらもネタのために積極的に投資をして痛い目にあったり逆に収益を挙げたりしています。実際に自分のお金で投資をした実例を述べているのでよくある教科書的な株式投資本よりタメになるし、読み物としても飽きずにスラスラ読めるのでオススメです。

本日の社会を生き抜く知恵

あやしいと思う投資話は自分で調べて情報を取りに行く行動力が必要。その行動が話のネタになる。ただし、かなり痛い目にある可能性がある。(FXみたいに・・)

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