社会を生き抜く知恵

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書評:さらば白人国家アメリカ(町山智浩)~アメリカへの幻想が粉々に砕けること必至~

投稿日:2017年1月4日 更新日:

まさかのトランプ大統領誕生ということで、今アメリカに何が起きているのかを知るためにネットで検索してたところ、面白そうな本を発見!著者の町山智浩さんのネット記事は何度か読んでいて、この人の本なら退屈せずに楽しめそうだと思い、さっそくキンドルで購入してみました。何が良いってとにかく現場に体当たりで取材しているから、リアル感があって妙に納得するんですよね。この人の書いた記事。例えば、話題になったこういうのとかねww

「完全にキマってます」町山智浩がマリファナまみれのトランプ支持者集会に突撃生中継【全文書き起こし】

本の表紙からすると、ちょっとふざけたネタ本かなと一見思いますが、いやいやどうして、全然真面目に現在のアメリカが抱える問題を大統領選挙に絡めて分析しています。で、題名にも書きましたが、自分はこの本読んで、アメリカに長年抱いてた憧れが木っ端みじんに粉砕されました。自分は、思春期に、海外ドラマ(ビバリーヒルズ、ドーソンズクリーク、OCなど)を見て育ったこともあり、アメリカ=寛容で先進的という憧れを勝手に抱いていました。それはアフガン戦争やイラク戦争などの対テロ戦争に突き進んでいき、強硬で乱暴なイメージが強まった後も、とはいえやっぱりアメリカは、正義、自由、平等、公平を重んじる国、日本より制度的、文化的に進んでいるなんだかんだで世界一の先進国・・・という思いは漠然と残っていました。ですが、この本読んで、日本の方がマシかも・・・と思ってしまいました。という訳で、特に衝撃を覚えたアメリカの実態を書いていきます。

アメリカ人の8割はパスポートを持たず、一生海外に行くことがない

世界各国に軍隊を駐留させて、ロサンジェルス、ニューヨークなど、様々な人種が生活する国際的な大都市をいくつも国内に有しており、かつ世界標準語たる英語が母国語のアメリカ。世界一の経済大国、軍事大国たるアメリカの国民は当然それなりに海外旅行しているものと勝手に思っていましたが、現実は、アメリカ人の7、8割はパスポートすら持たず、一生海外に行かない人が圧倒的多数!

アメリカ人の8割はパスポートを持たず、兵隊にならない限り、一生に一度も外国旅行しない。

ちなみに、日本人はどうかというと、パスポート保有率は約25%ということなので、日本とアメリカはほぼ同じレベル。(参照:外務省)内向きなイメージがある日本はまあそうだわなって納得ですが、社交的、積極的なステレオタイプなイメージからするとアメリカ人は意外なほどに内向き。こういうデータを見ると、アメリカ人のこの気質が、トランプが主張する「反グローバリズム」「アメリカファースト」の源流になるわけか、と妙に腹に落ちました。きっと、大都市以外に住んでいるアメリカ人からすれば、日本人なんてWWEに出てくるプロレスラーくらいしか見たことないんだろうな・・・(そういえば、トランプってWWEでビンスと殴り合ってたな。あれほんの数年前なのに、大統領になるとは・・)

アメリカでは企業による政治献金に金額の制限がないため、いくらつぎ込んでもOK~究極の金権政治~

アメリカと言えば、建国以来、共和制を維持している世界に冠たる民主主義の国。当然、要となる議会を構成する議員は自由かつ公平な選挙で選ばれ、議員に対する企業による政治献金には日本より厳格なルールがあるはず・・と勝手に思ってましたが、実際は・・・外部団体経由で、金額制限なしで企業献金をすることが可能で、現在では数十億ドル規模にまでなっているとのこと。

10年、最高裁が法人も「人」として政治に参加する権利があるという画期的な判決を下した。この判決によって、PAC(政治活動委員会)という応援団体なら献金の額の上限がなくなった。PACとは「政治活動委員会」の略で、政治家と直接接触しないで勝手に応援する団体。というのも、政治家への献金は上限が決められていたので、もっと献金を投入したい金持ちの受け皿として勝手応援団PACが作られたのだ。この判決によって、PACへの企業や団体による政治献金に金額の上限がなくなった。またたく間に数十億ドル規模の巨大PACが40以上も乱立した。

数十億ドルって国家予算か・・・完全、金権政治やん・・田中角栄が可愛く見えるレベル。ロビー活動が盛んなのは知ってましたが、ここまであからさまに企業が議員に金を突っ込める仕組みになってたのは衝撃的。なるほど、ピザが野菜になったり、国民皆保険制度(オバマケア)が徹底的に反対に合うのもわかるわ。ちなみに、日本の場合は、政治家への企業献金は一切禁止だけど、アメリカと同じように外部団体(政治資金団体)経由への寄付は可能で、上限額は年間1億円以内。(ただし、1億円献金可能なのは、資本金1,050億円以上の企業に限られるので、1億円まで献金できるのはかなりの大企業でないと無理)こう見ると日本の方がはるかにクリーンな政治をしているように思えてしまう。(参照:総務省)

と、このようにこの本を読むと、今までアメリカという国に抱いていた幻想がガラガラと音を立てて崩れ落ちること必須なほど、興味深いトピックを筆者は提供してくれます。アメリカの現状を知りたいという人にはお勧めの本です。

本日の社会を生き抜く知恵

他国の制度や現状についてデータを調べて具体的にひも解いてみると、意外な発見がある。イメージ、先入観にとらわれず、まずは調べてみることが重要。

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