リアリティは当然必要だろ!と思ってますか?
「このマンガはリアリティがないな」「おいおい・・ご都合主義過ぎて、冷めたわ・・」なんて、今までマンガ、映画、小説を見て感じたことはありますか。
自分も上から目線でよくこのようなセリフを言ってました。「俺は大人だから、現実的なものが好きなんだよ・・」と若干に悦に入ってすらいました。
今から考えるとどうみても中二病です・・・それはさておき、「フィクションにリアリティ描写をどこまで入れるか問題」をちょっと考えてみました。
今流行りの異世界モノのマンガや小説を読んで、「こんな現実感のない描写じゃダメだ・・」と思っている人がいたら、読んでみてください。考えが変わって、どんなブっ飛んだ設定のマンガも楽しめるようになります。
フィクションに100%のリアリティを求めたら、残酷過ぎて楽しめない
本当にリアリティあり過ぎるマンガを読みたいですか。ではこのマンガがおススメ・・・と勧めたりはしません。それより、ちょっとリアリティを重視した歴史マンガを考えてみましょう。
キングダムを例に出してみましょう。何巻か忘れましたが、主人公のシンが、味方の兵士が村を略奪するのを止めようとしている描写がありました。シンの部下たちも彼のその姿勢に共感している描写も同じくされていました。
自分も含めて、現代の世界に生きる我々の大半はこのシンの行動に共感します。
でも、この描写って明らかに現実的じゃないですよね。戦争の際に、勝者が略奪するのはつい最近まで当然の権利とされていました。
おおよそ2000年前が舞台であるキングダムの世界において、軍の現場指揮官が略奪を止めるなんてある訳がありません。ましてや、教養がなく、貧しい一兵卒がそのことに賛成するハズもありません。
もし、真にリアリティあるマンガにするならば、シンは、略奪を止めない、いやそもそも略奪が悪いという意識すら持っていない描写にする必要があります。
シンの仲間たちも喜々として、略奪に参加するという描写も・・・
まあ・・・これ以上あえて言わなくても、「おいおい・・そんなキングダム読みたくないわ・・・」と思う人が大半ですよね。
人は自分の生きる社会の価値観が不変なものと考えがちです。しかし、社会の価値観や常識は意外と早く変化します。
数百年前、いや数十年前の社会の価値観、常識ですら、現代に生きる我々からすれば到底受け入れがたいことも多くあります。
フィクションの「ご都合展開」は売れるためにはやむを得ない
つまるところ、完全にリアリティーを追求したフィクションは多くの人には受け入れがたいということです。
わかりやすいように歴史モノを例に挙げましたが、それ以外のジャンルでも100%リアリティーを追求したフィクションは、やはりエンターテインメント性が薄れてしまい、作品として楽しめないものになってしまいます。
そもそも、完全なリアリティーを追求した作品を見たければ、人類の歴史を紐解けばよいだけですから。身も蓋もない残酷な事実が腐るほど出てきます。
そんな救いようのない事実より、感動あふれるフィクションを求めるものが人情というもの。
ニュースなど本来あるがままの情報を伝えるべき事実すら、脚色しなければ、多くの人の目には留まらず、流れていくだけですから、フィクションに「ご都合展開の描写」を入れるのもやむを得ません。
という訳で、今後「ご都合展開の異世界モノ」に出会ったら、ちょっと考えてみましょう。
異世界モノの舞台の多くは中世がベースになっています。もし、本当にリアリティあふれる中世を描いたら、どうなってしまうのか。
そんな作品よりも、美少女が出てきて、多少の困難がありながらも、主人公が五体満足で物語が進んでいく作品の方が楽しめると思いませんか?